2008年5月29日木曜日

第五課題 横断領域の発見

趣旨;内側と外側、包むものと包まれるもの、隠しながら、露わになるというような対比的な語彙の関係の中に空間的な意味を感得することがある。横断は一つの語彙の中に対比的な意味を内包しているように思う。「横」はつながりを意味するが、「断」は関係を断つ意味が強い。横断を語義的に、調べると、横に断ち切ること、横または東西の方向に通過することである。横断組合のように個別のものを越えて横断的にとあるように横の連携を考えるものでもある。
 対比的、対立的概念の関係を横断しているものがあるのかもしれない。あるいは、横断領域というものがあるとしたら、それが空間的な意味を人に惹起させるのかもしれない。
 「‐‐‐かもね」的論理展開であるが、あるであろう横断領域を発見し、その様相、詳細を刻銘に描き切ってください。





表現;規定用紙275×275を用いて、3枚にまとめてください。(表紙は別である。)全体の外観や細部、あるいは空間断面などの視点から描き分けるのもよい。
   紙質、表現手段など自由。多彩も単彩も、モノクロームもよし。

期日;出題   —5月21日
   提出・採点—5月28日
   講評   —6月4日

           
                           (出題者・入江)

1G06D051 各務 太郎 A+++







桜の花びらが散っている風景を表現した塔。金属の片が中に舞っているのがうまく表現されている。サーリネンの教会の装飾を思い出す。アクリルの支柱、つり糸の処理が、ていねいにつくられていて、コンセプトをはっきり形にあらわした、とてもきもちのイイ作品である。“風の塔”の課題にうまくこたえている。(日置)

1X07A015 いしい ちあき A+++







塔の外側に土の球がしこんであり、そこに風で運ばれてきた種がくっつき、草花が芽吹く。独自の視点による、面白い発想である。模型も丁寧に作ってありとても好感がもてる。(箕原)

1X07A031 HIKARU OIKAWA A++







明快な経路とシークエンスを持つ作品。低い天井の入り口から進むと、空間のプロポーションの操作によって、徐々に意識が上方へと高められていく。最後は行き止まりの階段をのぼり、上方へとそびえる壁に直面することによって、意識は真上へと昇華する。地表のわずかな傾斜がよい。(池村)

1X07A184 RYUTA YAMAMOTO A++







黒いタワーと白い巻きつくものの対比が見られる。黒いタワーから突き出るブラケットとそれらを絡み取っていく黒いワイヤー。それぞれの単位が回転する。ワイヤーとブラケットの回転体はそこに不在である風を受け取る膜のようなものが意識されている。微かに揺らいでくる風の塔である。(入江)

1X07A067 熊谷哲夫 A++







風が吹くと音が出る塔。アフリカの土着的な雰囲気がある。ダイアグラムのシートにもの足りなさが残る。どこか、楽しい響きが聞こえてきそうな形である。模型の土台を重くしている。模型の存在を強調していてとても共感もてる。(日置)

1X07A114 竹花洋子 A++







ヌーッと突き立った白いタワー。刳り貫かれた直方体のヴォイド。そこに挿入された軸と回転する板。仕掛けは単純だが、白い直方体のフォルム、また表面のマットな質感が相俟って独特な存在感をあらわすとき、風が通過する直方体のヴォイドが回転体と共に唸り出すタワーとなる。(入江)

1X07A139 MAHIRU NISHIMURA  A++







原木をチェーンソーで削り取った彫刻のような塔。作品の存在感は群を抜いている。イタリア・アルテポーヴェラ(Arta Povera)に通じている、素材感が好感を持てる。物質のMassを表現することで、風を逆に思い起こす。力強い造形で非常によい。(日置)

1G06D802 YURI IGARASHI  A++







マグリッドの「これはパイプではない」の絵を彷彿とされるシュールな作品。論理的理解を拒絶するような造形、思わず「断面はどうなっているのか?」と興味をそそる。頂部の穴や表面の素材や色彩とも相まって、どこか生物的な雰囲気も感じさせる。(池村)

1X07A177 保川みずほ A++







カサ・ミラの屋上のペントハウス、煙突、換気塔群を思い起こした。ガウディは屋上を吹き抜ける風を意識して螺旋体でそれらをデザインしたようだ。風を受け止めたマッスが歪んだ造形となった感じが良く出ている。白いタイルの小スケールが利いている。(入江)

1X07A142 YUUKI NEMOTO A++







大きな羽が風を受けて動き始め、風によって塔のかたち自体が作られていくもの。偶然性による形を期待したものであるが、その偶然によるかたちも美しく気持ちいい。(箕原)

2008年5月28日水曜日

1X07A159 HORI MAKOTO A++







ロシア構成主義を思わせる造形。竜巻を1/4に割った形をしている。風の浮遊感を鉄の線材で表現している。土台部分が上と全く合っていない。作品の完璧性を貫いてほしい。(日置)

1X07A004 足立裕未 A++







かなとこ雲のイメージによる等。不定形な雲が風によって形を形成していくことをとらえ、すがすがしい軽やかな建築物にしている。(箕原)

1X07A042 小野友麻 A++








ミースの「ガラスの摩天楼」を思わせるフォルムが、白い軽やかなプリーツスカートを身にまとう。最近の建築デザインのひとつの潮流として、近代建築のパイオニア達の作品の参照が多く見られるが、この作品も又、軽やかな布という、およそ建材とはほど遠い素材を選択した上で、上記の系列に属するものだと言えるのかも知れない。女性的感覚に基づく再解釈とも言えるし、パロディとも言える。(池村)