2008年6月5日木曜日

6月11日の授業について連絡

設計演習Bを受講の皆さん、お疲れさまです。
2年生といえば設計の課題もようやく始まり、濃密な毎日を過している事と思いますが、設計演習の課題も残すところあとわずか3つです。最後まで頑張っていきましょう。

ところで、6月11日の授業では即日課題を行います。
授業はいつも通り13:30より開始しますが、課題を行う為の道具等を各自持参するようにして下さい。

持参するもの:規定用紙(275×275mm)2枚、
       自らが得意とする表現手段(鉛筆、色鉛筆、絵の具など、自由)

TA 鈴井

第六課題 「自画像建築」

人間的な空間とは、いかなるものであるか?
それを考える第一歩として、自分を建築にしてみるというのが今回の課題です。
1. 自画像: 手間をかけて創り出した作品はどこかその人らしさが反映されているものです、それを契機にしてもいいでしょう。日頃こだわっていたり愛着があるものに自己を投影してみることもあり得ると思います。もちろん本人の顔や体やその仕草も自分自身であります。
2. 建築: ここでいう「建築」とは広い意味でのもので、風景も室内もオブジェも空間的なもの全てを含みます。 また小さなものや自分自身をスケールを変えて建築に見立て、デフォルメすることなども可能でしょうし、風景のなかにそれを置いてみたり、内部に入り込んだ想像をしてみてもいいでしょう。

 提出物: 絵画による「自画像建築」として自分を表した建築的・空間的イマージュを描き出したもの。
なるべく内的なものが投影されるよう描きつくして下さい。

  275×275 の用紙、2 枚以上。(表紙は別)紙質・仕上・彩色は自由。
  
出題日: 5月28 日
提出日: 6月4 日 13:30
講評日: 6月18 日
出題者: 箕原真

1X07A122 田村正 A+++







精巧に作られた部厚い白い台紙が蝶番によって留められている。樹脂に鋳込まれた蜜柑、小魚、携帯がその横断面を見せている。小魚のさばき方は見事である。頭部から尻尾に向けて、背骨と小骨も構成がハッキリと見える。横断領域を樹脂で封印し作品とするためにすべての要素が丹念に作り込まれた見事な作品である。(入江)

1X07A142 根本 友樹 A+++







「私と君」のあいだを言葉が横断していく。人と人のコミュニケーションのなかに空間性を発見したこと、言葉が交わされる瞬間を巧みに描き出した事を高く評価したい。テーマに対する答え方と、その表現方法は抜群であった。告げ口をするときのような、何とも言えないいやらしい表情がよい。
(鈴井)

1g06d804 ERI KOBAYAHSI A+++







アルミ板に時計、文字盤のディテール、内部の機構が描かれている。その光面にケガいて描いたメタリックな時計の表現が、ピタリと一致している。素材選択、描法とが、表現というレベルで作品にまで高められている。時計、ケガく作業の時間が、静かに、その表現という作品の内側を貫いて横断している。(入江)

1X07A161 SHOTA HORII A++







透明な液体に徐々に黒い液体が混ざっていき、やがて、そのほとんどを黒い液の方が覆ってしまう。その過程を9枚の写真を美しくレイアウトすることで見せており、これなら写真でも納得する。(箕原)

1G06D701 TEPPEI IIZUKA A++







表紙に作り込まれたレリーフ。それらをだんだんと細かくしていった三枚の絵として展開している。平面に僅かな傾斜をつけただけで4種類の平面にグループ分けされるものになる。それが横断領域につながるのであろうか。
(箕原)

1X07A107 タカハシ コスモ A++







横断領域としておそらく3つの概念を思い浮かべたのであろう。
「死んでいて、生きている。
 切符。
 概念の死。」
言葉として示されたそれらに対し、魅力的な抽象画が描かれていて好感がもてる作品となっている。(箕原)

1X07A177 保川 みずほ A++







三枚連続の画面のうち、中央の画面だけがセピア色で描かれ、両端は淡く彩色されている。両端の淡くさわやかな色彩が、意識の中で、じんわりと中央部分にしみ出してくる。かすかな色合いの静かな横断領域。(池村)

1X07A112 田口 友子 A++







蝶の幼虫から成虫になるまでの過程を横断領域としてとらえている。さんしょの木やコスモスの花、蝶の棲息する場が周りに描かれている。統一したドローイングでまとめられているのは蝶の外観は変化しようが、そこには本質的には変わらないものがあると作者は思っているのだろう。緻密な表現は、作品の質を高めている。好感のもてる作品である(日置)

1X07A052 M.HORI  A++







Macro的に見たら蟻の行列で、黒の帯のような横断領域をとらえることができる。しかしMicro的にみると、ひとつひとつは生命体として独立している。そこに着目して人間が蟻の視点にたった描写を文章で添えている。カフカ的な少し現実離れした不思議な空間が立ち上がっている。Micro、Macroの対立がうまく表現されている。
(日置)

1X07A148 長谷川 容子 A++







「…しかし、うまそうにタバコをふかすオッサンだ」と、思わずにはいられない。喫煙自体が生と死の横断領域なのか?はたまた、フィルターを通過したニコチンが肺胞に蓄積されるまでに通過する気管が横断領域なのか?
(池村)

1X07A152 原 功一 A++







手の甲で皮膚を薄く切り剥ぎ取ってから、手首のあたりで刃物の向きを深い方向に向け、そのままひじにむかって横断し、ひじの手前でざっくり骨ごと切断した。神経はその細さのためかすっぱりと切れず、ひきちぎったかのようにその端部を空中におよがせている。神経繊維もまた横断領域か。(池村)

1X07A052 川口 竜太 A++







万里の長城を、実際に見てかいたものかわからないが、大きなスケールで描かれている。人為的な横断領域としては最大級である。この課題にふさわしいとらえ方をしている。万里の長城は、つくられた場所により、素材を石、土、レンガと変えている。壮大なスケールの中に緻密な描写が加わればさらによくなったと思う。(日置)

1X07A169 MARINA MIZOGUCHI A++







生徒のいない教室。机が整然と並んでいる。5、6個の机の縦列を横切る空隙的通路。それはあたりまえの視覚だ。先程、「整然と」といったが、いくつかその「整然」をこわすものを作者は見落とさなかった。「整然」をこわして横断したものは何ものだろう。生活風景の記憶を丹念に描いてくれた佳品である。(入江)

1X07A007 CHIAKI ARAKAWA A++







マンションの玄関。ハイヒールにあわただしく脱ぎ捨てられた様子が切迫感の状況をかもし出している。傘立、たたみ、カーテンなど、いつもの佇まいなのに、ハイヒールは開け放しの扉とともに、ここを通り過ぎたもの、横断した者の軌跡を刻印している。「What happened ! 」、横断領域は際限なく泡立ち続けているのだ。(入江)