2008年6月20日金曜日

第七課題 生活を想像し、克明に描く

ジョセフ・ギース/フランシス・ギース著「中世ヨーロッパの農民の生活」の中の、1300年頃のイングランド、エルトン村の生活の様子について記述を読み、自分が想像する当時の生活風景を、手で克明に描くことによって、表現してください。

歴史考証的な正確さは、特に求めません。
表現者として、自らの想像力を自由に羽ばたかせて、自由に表現してください。

もちろん、歴史考証的に正確な表現を心がけてもかまいません。

当時の人々が生活している姿を生き生きと蘇らせるような、濃密なドローイングを期待しています。


配布資料:A3のプリント一枚
提出物:手で克明に描いたドローイング、規定用紙(275×275mm)2枚以上
    (表紙含めず。ただし表紙は必ず付けること)

出題:2008年6月4日
提出:2008年6月18日13:30
講評:2008年6月25日

出題者:池村

1X07A162 堀越 理沙 A+++








息を飲むようなイメージの深さ。内省的な空間を丁寧に描き出している。脚から下の歩きまわる物体、卵が割れたような石、何人もの人達によって構築された建築。よく見ると奥に一点の光。いずれもちょっとやそっとでは考えつかないもので構成された風景である。(箕原)

1X07A174 村岡 拓見 A++








ECLECTIC:いくつもの価値観をかさねて
「折衷主義的な私」ということであろうか?無装飾な新古典主義といった一面とグニャグニャと生物的な様相を見せるもう一面。階層も食い違っており、錯綜した内部空間が予想される。一見、整った面とその背後の形態的混乱、整った面もとりつくろった印象を受ける。(池村)

1G06D701 TEPPEI IIZUKA  A++








SKIN + ARCHITECTURE
標本箱のように丁寧にしつらえられた作品。ペースト状の素材やプラ板を用いて作った様々なSKINが漂白された色彩で埋め込まれている。触感の標本化。ペースト状の素材がつや有りなのが興味深い。
(池村)

1X07A011 SAEKO IKEDA A++








デタラメで気まぐれな構築への意志と、実はそれが内にこもるものであることが興味深い。
黒い内実に、つる草のような繊維を巻きつかせた造形。細部を見ると、さらにチョロチョロ、ピロピロとこまかくほつれて先端があばれる。先端には小さな花がひっそりと咲く。(池村)

1X07A004 足立 祐未 A++








納骨堂のようなさびしい建物とその周りにひまわりが植えられている。作者の心象風景であろう。次に描かれたボックス状の建物と、前の絵との関係性は不明であるが、どこか静と動を感じる。どちらもさびしさは感じるが、前向きな生き方を感じる。(日置)

1X07A005 TOMOKI ABE A++








大地とそれを覆う昏れなずむ天空。そこに佇む帽子をかぶった杖のような存在。存在の不安を表象しているのだろう。帽子と杖の尽きた尖端とを、屈曲する断片が方向を変化させながら組み上がって帽子を支えている。JOINTの構成に、「存在の不安」者の思想フォルムを見るようだ。(入江)

1X07A060 木田 恵理奈 A++








闇の中に幹と枝々を拡げている。枝枝の隙間に星のような花のような輝きがある。樹木を人になぞらえることも多い。幹に穿たれた楕円のような開口に緑の子葉が生き生きと身を開いている。闇と、乾涸びた樹皮の内部にある勁い生命感を詩うような姿。自画像建築なのだろう。(入江)

1X07A109 高山 彰 A++








臆病者の城。有機的なフォルムの外観。もう一枚は私室が描かれている。「臆病者」は部屋の中でも仮面をかぶっている。この主役のために駆り立てられる多様な小物たちの集積と、それを反映する外観のフォルムが、「臆病者」を浮き彫りにするために執拗に描かれている。執拗さに期待したい。(入江)

1X07A032 大石 将平 A++








自分の体が、建築物にかわっていく、少し異様な雰囲気をもっている。頭の中で湧き出るイメージが自らの身体を蝕んでいく。おそらく、課題地獄で耐えられない状況を表現しているのか?現実社会はもっと厳しい。頑張ってほしいものである。(日置)

1X07A139 西村 真昼 A++








自分自身な体に窓を開けて建築にしてきている。開口部が突き刺さることによって生身の人間から建築的なものが発生する。瞬間を力強く表している。(箕原)

1X07A148 長谷川 容子 A+








自分の身体の様々な部分をそれぞれ一旦切り離してから再構成している。一見、元の体と似たような配置なのだが、ちょっとした操作によって自我の無い感じを表わそうとして逆に強烈に表れている。(箕原)

1X07A071 MADOKA KEBUKAWA A++








「EAR TUNNEL」耳の形が決して機能ばかりでない不思議なかたちをしていることに注目している。そこからイメージを膨らませて空間的なものにしているのだが、立体に対応をした色彩が新たに発生しているのが面白い。(箕原)

1X07A122 田村 正 A++








作者にとって、自画像建築とは、自らが建築をつくることであろう。自らの肉体によってつくる姿勢は好感がもてる。建築の身体性を貫こうとしていてとても若々しい精神が伝わってくる。絵で描いているようなことを是非実行にうつして欲しい。将来に期待する。がんばってほしい。(日置)

1X07A076 小林 俊文 A+








外観を持たない空間、建築(?)内向きの空間。外観を持たないが故に空間の、虚の実体性は知覚されやすくなっている。この空間は、内向的であるとともに非常に強い方向性を持ちあわせているが、どことなくさびしげな雰囲気もある。少なくとも強さは感じない。そこが、自画像なのか?(池村)

1X07A165 AKIHIRO MATSUDA A+








人生の選択を、矢印を使ってコミカルに表現している。全体的にネガティブな作品が多い中、自分を明るくとらえているような気がする。思えば、人生は、選択の連続であろう。どちらを選べばよいか、その結果はどうなるのか、以外とこんな絵のようなものかもしれない。自分を知的にうまくとらえている、いい作品である。(日置)