2008年11月26日水曜日

TAより

設計演習C受講生のみなさま、お疲れさまです。

11月19日に行われた公開講評会におきまして、参考展示していた昨年度の設計演習イヤーブックが紛失するという事態がおきました。イヤーブックはTA魚本が時間をかけて制作した、たいへん貴重なものです。間違えて持っていってしまった人は、こっそりで構いませんので、入江研究室に戻して下さい。また、この件に関して何か心当たりのある方は、TAまで連絡いただけるとありがたいです。

よろしくお願い致します。

TA 鈴井

1X07A122 田村 正 A+++







手が見たものを、手を描きそれに添いながら、ストーリーの中枢を、その方法故に版画で表現した。いくつかの手のシーンをアンソロジー風にまとめつつ、「アルベール」が広場に踏み出し、おもむろに手を上げるシーンはこの映画の圧巻である。手の差し上げられた空隙の周辺の建物のコーニスが回転し始める佳品である。(入江)

1X07A071 癸生川 まどか A++







「アルベール」が広場に歩み始め、おもむろに手を上げる。世界に自らをさらけ出すように。その後姿は女主人の眼が、求める手が見たものであり、塗りつぶされたクレヨンの闇に鈍くひかる街の灯のけがきが、行き場のない深く重い旋律を奏でるのである。秀逸な表現が好ましい。(入江)

1X07A077 小林 裕 A++







逆光の中、非常に大きく、ぬるっとした頭をなでる肉感的な、大きな手。この大きく、髪の毛の生えていないぬるぬるとした頭は、何故か微妙なやわらかさを感じさせる。頭は茫洋と広がり、紙面の外にまでいたっている。(池村)

1X07A056 河原 大輔 A++







黒い背景である、その上に、二つの身体のマッスが両端に位置を占めながら、片側から片手がもう一方に呼びかけることによって、対応関係が生まれてくる。どのシーンを選択したか不明であるが、黒とグレーの位置によって、女主人と浮浪者の心の応答が、浮き上がってくるようだ。(入江)

1G06D802 五十嵐 ゆり A++







アルベールの日課である、古雑誌を切り抜く状景を描いている。しかしその誌面は白紙であり、鋏の切り込みには、過去の二人の思い出だろうか、男女のシルエットが印象的に描かれている。文章の一場面を正確に描写したようでいて、そこに作者の情緒的なイメージが入り込んでいる、不思議な作品である。(鈴井)

1X07A021 Akiko Imai A+







「記事」ハサミで切り取る場面を拡大して紙一杯に描いてきている。これこそ「手で見た風景」である。出題の正当的な解釈に基づいて素直に描いているだけでなく、心情も込っていて好ましい。(箕原)

1X07A043 小野田 理奈 A++







黒塗りにされた画面の中央にクレバスが描かれている。おそらく彼女の手が見た、彼の頭髪の中にまみれた傷だろう。傷に触れると、過去が想起される。そして、傷口が開いていることで、眼にも思える。この傷と、彼女の手が、双方見合った関係が構築されている点が、秀でている。(魚本)

1X07A154 藤井 啓介 A++







寝ているのは、路上生活をするアルベールであろうか?暗い雰囲気の画面、アルベールの手が見えているが、そのアルベールを見ているのも、また手なのであろう。どのような位置の、どのような姿勢の手なのであろうか?(池村)

1X07A119 田辺 真由子 A++







手が見た情景を素直に想像しながら描いている。二枚目の街の情景は、正確な三次元で描いていないところが、どこか別世界の空間を感じてしまう。どこか寂しく悲しい風景が、映画の雰囲気と一致している。(日置)

1G06D701 Teppei Iizuka A++







登場人物の心象風景であろうか、泡のもつ不思議な魅力が、何かを喚起させる。作者の一連の作品の傾向を色濃く反映させているが、もの足りなさを感じてしまう。新たな手法の転換を期待する。(日置)

1X07A162 堀越 理沙 A++







逃げていくアルベールを中心に物語の様々な場面が描き出されている。彼の失った記憶の出来事であろうか。緻密に描き込まれた複雑な構成の絵には迫力がある。(箕原)

2008年11月24日月曜日

第六課題 言葉からの喚起力

—ここに示すのは映画作品のト書を下敷きにした詩人の解説文である。パリの郊外のカフェの女主人が、戦死したと思っていた夫を戦後十数年ぶりにふと見かけ、その邂逅を喜んで、落魂している彼の世話をするが、夫は頭に傷を受けて記憶喪失症にかかっており、彼女のもとから再びどこかへ行ってしまったという実話をもとに脚本が書かれているという。別紙が映画のストーリのあらましであり、詩人の感得したストーリである。まず、この映画のさまざまなシーンを、主人公や町々や建物、生活風景を含めて各自想像力を発揮して思い描いてください。そのうえで、詩人が深い関心を寄せて目にとめているカフェの女主人と浮浪者の手を、手の仕草を見やってください。
そして、彼の、彼女の手が見たものを、手を主人公として周辺のシーンを描いてください。

提出物;表紙+275×275規定用紙一枚以上
表現;モノクロ。着彩の用があれば自由。

出題日;11月12目(水)
提出・採点目;11月19目(水) 港区赤坂区民センター3Fホール 午後1時
講評目;11月26目(水)


出題:入江

1X07A174 村岡 拓見 A+++







それぞれの坂の斜面をモチーフとした椅子をデザインしてきている。座面の水平がそれぞれの坂の個性を引き出す結果になっており、坂の多い赤坂の特色を出していて面白い。(箕原)

1X07A122 田村 正 A++







「坂」に置かれた自販機の提案である。本来、自販機は大量生産の産物であるのに、あえて一品生産のシステムにつくりかえているところが目からうろこである。大量生産も個別対応が要求されている現代では、自販機ももはや、その流れを考えなければいけないのか少し考えてしまう作品である。(日置)

1G06D802 五十嵐 ゆり A++







元来、大地は微妙な起伏に満ちている。その理由は、実はその薄い表皮の下は、弾力性のある透明なリングがあり、その形状が大地に現れているのである。(池村)

1X07A086 作井 允 A++








重力によって垂直に引っ張られていることを視覚化することで坂を感じさせる。人が持って歩くことで、様々に変化するものを作ってきたことで魅力が出ている。(箕原)

1X07A139 西村 真昼 A++







「坂」の身体性を、けやきを削り取る彫刻で表現している。論理的なイメージを基本とするのではなく、素材の質感と感性を結びつけようとしているところが非常によい。なんといっても、けやきの香りが、この作品をよりいっそう輝かしている。(日置)

1X07A114 竹花 洋子 A++







異常に高いヒールがヒステリックをかもし出す赤紫色のハイヒール。とがったヒールの先が金属で武装されているのみならず、陸上競技用の短距離走のスパイクの様に、鋭利なスパイクも5本装着されている。狂った怒りに駆り立てられ、猛然とダッシュするのであろう。(池村)

1X07A071 癸生川 まどか A++







映像のイメージから、今回の造形に結びつけた作品である。二次元の写真と三次元の赤い玉が連続するのが、発想がうまい。飛び出る絵本のような、ちょっとしたストーリーを発想させるつくりである。赤い玉がシンボル的な扱いであるが、少々謎めいたオカルト映画の雰囲気を感じてしまう。(日置)

1X07A045 Haruka Kashima A++







坂道を人生にたとえた人間味のある作品となっている。坂を転がるコマをイメージして、生涯の人生の模様としてまとめあげている。地勢の起伏を、感情の起伏へと転調している点をかいたい。(入江)

X07A005 ABE TOMOKI A++







変化に富んだ坂の表情の勾配を直線的に拾う。不定形な坂の斜面を建築的な平面によって近似させようとすることで、シャープな造形が浮かび上がってくる。(箕原)